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ざわざわと、各々が真横にいるペンたちとああでもない、こうでもないと話していると、棚の通路に若い男性が入ってきた。ペンたちは、(どうせ聞こえはしないのだが)反射的にピタリとおしゃべりを辞めた。
男性は、うーんと目を細めながら、棚に並ぶペンたちを上から順に一本ずつ吟味していた。ペンたちは、「僕を買ってください」「私の方があなたに尽くします」「古き良き使い勝手をあなたにお教えいたしましょう」などと心の中で念じながら、彼の反応をうかがった。
そしてその男性はついに、棚に手を伸ばした。
「やっぱ書類だし、消えるのはマズイから、こっちかな」
そう言って、左手に持っていた見慣れぬボールペンを乱暴に棚の中に放り投げ、さきほどかつての大戦争の話をして棚中を張り詰めた空気にした古株のペンを手に取り、レジへ向かった。
「…あの人が選ばれたか」
「まあ、あの人なら…仕方ないよな」
選ばれなかったペンたちは落胆していたが、あの古株のペンはそれこそ長い歴史を持ったペンだったので、皆が皆、納得をしていたようだ。
問題は、あの男性が棚の中に放り込んだ、見慣れぬペンだ。各々が仲間たちと手を取り合い綺麗に整列している中で、そのペンは何の断りもなく勝手に入り込んできた。何か一言あっても良いのではないだろうか。しかし、その見慣れぬペンは申し訳なさそうな顔をするどころか、ふくれっ面をして周りのペンたちを睨みつけていたのだ。
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