序章 永遠の安息を 《Requiem aeternam》

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「わが反魂の審問術、『冥府還り(ラザレス・リターン)』。つかの間ですが、あなたの魂は、現世に呼び戻されました。 ――さぁ、魔女たちの手で斃された無念のたけを、語ってください」 「ヴヴ……ッ……」 生首の唇が、言葉を紡ぎ出す。その呟きを聞き取るため、少年が、生首の口もとに耳を寄せた。 「……そうですか、そうでしょうとも。『魔女』たちにこういう目に遭わされては、安らかに眠れますまい。ご無念は、よく分かります」 少年が、頷く。それに応えるように、生首が呟き続ける。 「何ですって?……ほう、それは興味深い。 『薔薇の園の死神』シャルロットと『殺戮の野の百合』ベルナドット・バルタザールのほかに、もうひとり、魔女がいたと?」 「……」 「そうですか。その娘が、あなたをこんな目に遭わせたのですか」 生首の目に、怒りの炎が宿る。それを見下ろす少年の目も、きらりと輝いた。 「それで、娘の名前は、何というのです?」 「ウ……。カ、カオ……ル……」 「かおる?薫……ですか?」 「間宮……薫……」 少年の問いに、首が、目を瞬かせて答える。首だけの男の生命の火が、いま、消えようとしていた。 
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