適当な説明【漆】

2/3
前へ
/67ページ
次へ
「今日は白夜の日だよ」 「え? 何でですか?」 「子供の日だから」 「私は子供じゃ――「屋根より高い鯉のぼり~♪ おおきいまごいはお父さん♪ 小さいひごいはこどもたち♪ 面白そうに泳いでる♪」 「私は父親も居なければ、一人っ子でしたけど」 「白夜は鯉なの? 鯉しちゃって……ああ、霙に恋しちゃってるって? 知ってるよ、早く結婚しよう」 「相変わらず、無理矢理なプロポーズですね。お断りします」 ―― 「こどもの日、かぁ……」 「白夜はこどもの日、何かして貰ったりした?」 「特に何も。母親は私を忌み嫌っていましたし、父親は上手く言えないのですが……、全ては、そのっ……じ、自分の為に優しくしてくれていた。みたいな…… って言っても、両親揃って別居して、然程関わっていなかったので、記憶に残るような事はしてもらった覚えないかなぁ」 「ふぅん」 ※白夜(ショコラ)の過去を水鏡視の術で見てるので、心理的外傷になってる過去は全て知ってる。故に然程の関心がない。 「あっ……でも! 千里様は毎年、鯉のぼりをあげてくれましたよ。お菓子とか、玩具をたくさんくれて…… 千里様が亡くなってからは、隼人が毎年鯉のぼりあげてくれたんです。いっつもガイや焔に私を任せて遊びに出てたけど、こどもの日だけはずっと傍にいてくれて、祭に連れ出してくれたり……ふふ、懐かしいな」 「へぇ~。いいね、そういうの」 「霙さんは? こどもの日に何かして貰ったりしましたか?」 「霙はそういうのないなぁ~……」 「えっ……」 「毎年、母親が鶴を折ってくれた位……」 「母親!? 霙さんの母親ってーー「霙の話はどうでもいいよ。こどもの日なら、どっかで祭やってるかもね。遊びに出てみよっか」 「えっ、いいんですか!?」 「うん。行こっか?」 「はい!」 ―― ーー祭会場にて。 「ね、白夜。見世物小屋があるから行ってみない?」 「い、いやいや……見世物小屋はちょっと――って…… 嗚呼、行っちゃった。ん……?」 「なんでぇ、嬢ちゃん。 気に入ったもんがあったら遠慮せず買ってってくんな!」 「なら、この千代紙をひとつ下さいな」 「はいよ! 毎度あり!」 「ありがとうごうざいます。(……頑張ろう)」 ーー 「白夜、射的射的! やろやろ~♪」 「私、射撃全くのど素人なんですよね……銃は苦手で」 「霙も得意じゃないけどね~。 欲しいものがあるなら、取ってあげるよ」 「じゃあ……あのぬいぐるみ。兎さんの」 「任せて~? おじさん、弾100発頂戴」 「はぁ!? そんなにかい!?」 「でないと、あんなにでっかい兎落とせる訳ないでしょ」 「お金はーー「はいはい。仕方ないから上乗せしてあげる」 「に、兄ちゃん……あんた何者だよ!? こんなに「いいから早く弾」   「あ、あいよっ……」   「さあて、やりますか」 「頑張ってくださいね!」 「任せて?」 ズドドドド ズドドドド ズドドドド ズドドドド ボトッ 「わっ……! 落ちた!!」 「さすが霙でしょ?」 「兄ちゃんすげぇなぁ……これ落とそうとして皆失敗してたっつーのによぅ。ホレ、持ってきな」 「何てたって霙だからね~。はい、白夜。プレゼント」 「わぁ~……嬉しいです。ありがとうごうざいます!」 「さて、弾も余ってる事だし……次は何を取ってほしい?」 「そうですねぇ……、次はーー」 ーー 「はぁ~……久々に我を忘れて楽しんじゃいました」 「ふふ……それは良かった」 「(……やっぱり、母親の事を口にしてから元気がないような……)あ、あの……、霙さん?」 「ん?」 「これ……」 「鶴……? どうしたの、これ」 「霙さんが見世物小屋に夢中になってる間に、作ってみました。 えへへ……。下手、なんですけど……霙さんに」 「本当に下手だね。所々破れ「わあぁあぁっ!! いっ、言わないでくださいよぉ~!」 「鶴、折れないの?」 「善吉さんに教えてもらって何回かは出来たんですけど…… たはは……何でだろ? また、折れなくなっちゃって……」 「霙、得意だよ。綺麗に折れるまで教えてあげようか?」 「本当ですか!? 是非、お願いします! 千代紙も一杯買ったので、たくさん折れますよ!!」 「そっかそっか。じゃあ早く帰ろ」 「あっ、あのっ……」 「何? まだ何かーー「元気になって……、くれますか?」 「元気……?」 「霙さん、さっきから笑ってる様で笑ってないから」 「そんな事ないよ。霙はいつでも元気元気です」 「……嘘、」 「嘘じゃない」 「瓜二つな顔だからこそっ……そして、私の得意とする表情であるからこそ、嫌でも解っちゃうんです。貴方のその笑顔が虚勢だ、って……」 「…………」 「元気、出してください……」 「ありがとう。大丈夫だよ。 さすがは白夜! 霙の事愛し過ぎてそこまで読める様になっちゃったんだ~。うんうん、白夜は霙の良いお嫁さんになるよ」 「霙さん限定のいいお嫁さんですか。素直に喜べない褒め言葉ですね」 「何言ってるの? 全力で喜ばなきゃダメな所だから」 「わーいわーい」 「棒読み~」 「……ふふ、いつもの霙さんに戻ったみたい。良かった……」 「白夜はそういう生意気な所が、やっぱり子供」 「うぅ……すぐそう言う事言う……」 「すぐ不貞腐れる所なんかは子供極めてるよね」 「もおぉっ! 知りません!」 「はははっ! 霙はそんな白夜が大好きだ~!!」 「わっ、離してください! 歩きにくいですから!」 ーー ーーアジトにて。 「ホレ」 「え? 急に何?」 「祭の射撃で取った。要らねぇからくれてやるよ」 「わあぁ~!! 空吾まで! ありがとう!! 嬉しいな、嬉しいなっ」 「やっぱり餓鬼だな、お前は……」 「嬉しいものは嬉しいよ。素直に喜ばないのが大人なの?」 「誰もそこまで言ってねぇだろうが」 「白夜、はい! オイラからは縁日ひよこをプレゼントだ」 「聿志君まで! ふふっ……ありがとうございます。もふもふしてて可愛いなぁ~」 「多分育つ前に死ぬだろうけど、上手く育ったら丸焼きにする? それとも「夢をぶち壊す発言は控えてください」 「照り焼きだな!」 「聿志君。無邪気な顔して、ひよこさんの残酷な将来決めちゃわないで……」 「餓鬼に物を貰って喜ぶ餓鬼。微笑ましい光景だな」 「空吾! 空気読もう?」 「それより、霙兄ちゃん達は何やってんの? 折り紙?」 「白夜に鶴の折り方を教えてたの。聿志も折る?」 「オイラ折り紙なんて折った事ねぇぞ?」 「教えてあげるよ。座りな~」 「やったー! んじゃ、オイラこの派手なの使お~」 「折角だし……、空吾も折らない?」 「仕方ねぇ。暇だからな。やってやるよ」 「ふふ。じゃあ皆で折り紙を折りましょう」 ―― 「でーきた! どう? オイラ超完璧に折れてね?」 「えぇ……? 何で? 折り紙を折った事がない聿志君がこうも綺麗に折れて、何で何回も折ってる私はこんなに下手なままなの……?」   「白夜ってば、本当に不器用極めてるね」 「あぐぅ~。ぐさりと来ました、今の台詞……」 「ここをこうして、」 「んっ……」 グシャリッ 「何で破いちゃうの?」 「わ、わわ、解らない……。か、完成に近付けば近付く程、手が思うように動かなくなって……」 「どれだけ緊張してるんだか。霙がその緊張解きほぐしてあげよう」 「上手に手握らないで?」 「出来た」 「お、すっげぇ空吾様! それ何?」   「キリン」 「器用だよな。空吾様って」 「由緒正しき刀鍛冶屋の一人息子だからな。当たり前よ」 「器用……刀鍛冶…… 嗚呼……そう言えば宗君も小太郎も姫月さんも、折り紙折るの凄く上手だったなぁ…… 」 「空吾、本当に空気読んで。白夜凹まさないでくれる?」 グシャッ 「テメェ! 何しやがる!」 「あーあっ……キリンさんぐっしゃぐしゃ」 「はぁ……」 今日も平和な仲良し義賊団なのでした。 終わり。 ――
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加