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「今日は白夜の日だよ」
「え? 何でですか?」
「子供の日だから」
「私は子供じゃ――「屋根より高い鯉のぼり~♪ おおきいまごいはお父さん♪ 小さいひごいはこどもたち♪ 面白そうに泳いでる♪」
「私は父親も居なければ、一人っ子でしたけど」
「白夜は鯉なの? 鯉しちゃって……ああ、霙に恋しちゃってるって? 知ってるよ、早く結婚しよう」
「相変わらず、無理矢理なプロポーズですね。お断りします」
――
「こどもの日、かぁ……」
「白夜はこどもの日、何かして貰ったりした?」
「特に何も。母親は私を忌み嫌っていましたし、父親は上手く言えないのですが……、全ては、そのっ……じ、自分の為に優しくしてくれていた。みたいな……
って言っても、両親揃って別居して、然程関わっていなかったので、記憶に残るような事はしてもらった覚えないかなぁ」
「ふぅん」
※白夜(ショコラ)の過去を水鏡視の術で見てるので、心理的外傷になってる過去は全て知ってる。故に然程の関心がない。
「あっ……でも! 千里様は毎年、鯉のぼりをあげてくれましたよ。お菓子とか、玩具をたくさんくれて……
千里様が亡くなってからは、隼人が毎年鯉のぼりあげてくれたんです。いっつもガイや焔に私を任せて遊びに出てたけど、こどもの日だけはずっと傍にいてくれて、祭に連れ出してくれたり……ふふ、懐かしいな」
「へぇ~。いいね、そういうの」
「霙さんは? こどもの日に何かして貰ったりしましたか?」
「霙はそういうのないなぁ~……」
「えっ……」
「毎年、母親が鶴を折ってくれた位……」
「母親!? 霙さんの母親ってーー「霙の話はどうでもいいよ。こどもの日なら、どっかで祭やってるかもね。遊びに出てみよっか」
「えっ、いいんですか!?」
「うん。行こっか?」
「はい!」
――
ーー祭会場にて。
「ね、白夜。見世物小屋があるから行ってみない?」
「い、いやいや……見世物小屋はちょっと――って……
嗚呼、行っちゃった。ん……?」
「なんでぇ、嬢ちゃん。
気に入ったもんがあったら遠慮せず買ってってくんな!」
「なら、この千代紙をひとつ下さいな」
「はいよ! 毎度あり!」
「ありがとうごうざいます。(……頑張ろう)」
ーー
「白夜、射的射的! やろやろ~♪」
「私、射撃全くのど素人なんですよね……銃は苦手で」
「霙も得意じゃないけどね~。
欲しいものがあるなら、取ってあげるよ」
「じゃあ……あのぬいぐるみ。兎さんの」
「任せて~? おじさん、弾100発頂戴」
「はぁ!? そんなにかい!?」
「でないと、あんなにでっかい兎落とせる訳ないでしょ」
「お金はーー「はいはい。仕方ないから上乗せしてあげる」
「に、兄ちゃん……あんた何者だよ!? こんなに「いいから早く弾」
「あ、あいよっ……」
「さあて、やりますか」
「頑張ってくださいね!」
「任せて?」
ズドドドド
ズドドドド
ズドドドド
ズドドドド ボトッ
「わっ……! 落ちた!!」
「さすが霙でしょ?」
「兄ちゃんすげぇなぁ……これ落とそうとして皆失敗してたっつーのによぅ。ホレ、持ってきな」
「何てたって霙だからね~。はい、白夜。プレゼント」
「わぁ~……嬉しいです。ありがとうごうざいます!」
「さて、弾も余ってる事だし……次は何を取ってほしい?」
「そうですねぇ……、次はーー」
ーー
「はぁ~……久々に我を忘れて楽しんじゃいました」
「ふふ……それは良かった」
「(……やっぱり、母親の事を口にしてから元気がないような……)あ、あの……、霙さん?」
「ん?」
「これ……」
「鶴……? どうしたの、これ」
「霙さんが見世物小屋に夢中になってる間に、作ってみました。
えへへ……。下手、なんですけど……霙さんに」
「本当に下手だね。所々破れ「わあぁあぁっ!! いっ、言わないでくださいよぉ~!」
「鶴、折れないの?」
「善吉さんに教えてもらって何回かは出来たんですけど……
たはは……何でだろ? また、折れなくなっちゃって……」
「霙、得意だよ。綺麗に折れるまで教えてあげようか?」
「本当ですか!? 是非、お願いします!
千代紙も一杯買ったので、たくさん折れますよ!!」
「そっかそっか。じゃあ早く帰ろ」
「あっ、あのっ……」
「何? まだ何かーー「元気になって……、くれますか?」
「元気……?」
「霙さん、さっきから笑ってる様で笑ってないから」
「そんな事ないよ。霙はいつでも元気元気です」
「……嘘、」
「嘘じゃない」
「瓜二つな顔だからこそっ……そして、私の得意とする表情であるからこそ、嫌でも解っちゃうんです。貴方のその笑顔が虚勢だ、って……」
「…………」
「元気、出してください……」
「ありがとう。大丈夫だよ。
さすがは白夜! 霙の事愛し過ぎてそこまで読める様になっちゃったんだ~。うんうん、白夜は霙の良いお嫁さんになるよ」
「霙さん限定のいいお嫁さんですか。素直に喜べない褒め言葉ですね」
「何言ってるの? 全力で喜ばなきゃダメな所だから」
「わーいわーい」
「棒読み~」
「……ふふ、いつもの霙さんに戻ったみたい。良かった……」
「白夜はそういう生意気な所が、やっぱり子供」
「うぅ……すぐそう言う事言う……」
「すぐ不貞腐れる所なんかは子供極めてるよね」
「もおぉっ! 知りません!」
「はははっ! 霙はそんな白夜が大好きだ~!!」
「わっ、離してください! 歩きにくいですから!」
ーー
ーーアジトにて。
「ホレ」
「え? 急に何?」
「祭の射撃で取った。要らねぇからくれてやるよ」
「わあぁ~!! 空吾まで! ありがとう!! 嬉しいな、嬉しいなっ」
「やっぱり餓鬼だな、お前は……」
「嬉しいものは嬉しいよ。素直に喜ばないのが大人なの?」
「誰もそこまで言ってねぇだろうが」
「白夜、はい! オイラからは縁日ひよこをプレゼントだ」
「聿志君まで! ふふっ……ありがとうございます。もふもふしてて可愛いなぁ~」
「多分育つ前に死ぬだろうけど、上手く育ったら丸焼きにする? それとも「夢をぶち壊す発言は控えてください」
「照り焼きだな!」
「聿志君。無邪気な顔して、ひよこさんの残酷な将来決めちゃわないで……」
「餓鬼に物を貰って喜ぶ餓鬼。微笑ましい光景だな」
「空吾! 空気読もう?」
「それより、霙兄ちゃん達は何やってんの? 折り紙?」
「白夜に鶴の折り方を教えてたの。聿志も折る?」
「オイラ折り紙なんて折った事ねぇぞ?」
「教えてあげるよ。座りな~」
「やったー! んじゃ、オイラこの派手なの使お~」
「折角だし……、空吾も折らない?」
「仕方ねぇ。暇だからな。やってやるよ」
「ふふ。じゃあ皆で折り紙を折りましょう」
――
「でーきた! どう? オイラ超完璧に折れてね?」
「えぇ……? 何で?
折り紙を折った事がない聿志君がこうも綺麗に折れて、何で何回も折ってる私はこんなに下手なままなの……?」
「白夜ってば、本当に不器用極めてるね」
「あぐぅ~。ぐさりと来ました、今の台詞……」
「ここをこうして、」
「んっ……」
グシャリッ
「何で破いちゃうの?」
「わ、わわ、解らない……。か、完成に近付けば近付く程、手が思うように動かなくなって……」
「どれだけ緊張してるんだか。霙がその緊張解きほぐしてあげよう」
「上手に手握らないで?」
「出来た」
「お、すっげぇ空吾様! それ何?」
「キリン」
「器用だよな。空吾様って」
「由緒正しき刀鍛冶屋の一人息子だからな。当たり前よ」
「器用……刀鍛冶……
嗚呼……そう言えば宗君も小太郎も姫月さんも、折り紙折るの凄く上手だったなぁ…… 」
「空吾、本当に空気読んで。白夜凹まさないでくれる?」
グシャッ
「テメェ! 何しやがる!」
「あーあっ……キリンさんぐっしゃぐしゃ」
「はぁ……」
今日も平和な仲良し義賊団なのでした。 終わり。
――
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