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その日の午後、修は地下鉄に乗り込み、二駅目で降りた。
そして、数分ほど歩いた先にある十階建てのビルに入った。
入り口で警備員にICカードを渡しチェックを受けた後、エレベーターに乗り込んだ修は八階のボタンを押した。
エレベーターの扉が開くと、更に警備員が立っており再びチェックを受けた修はやれやれと首を左右に動かしながら<トレーニング研究室>というプレートが貼ってあるドアを開けた。
「こんにちは、今日も暑かった?」
細身の男が、パソコンのモニターに顔を向けたまま、修に声を掛ける。
「何なんですかね、異常っすよ。この殺人的暑さ。庵原さんはいいっすよね、今日もこのクーラー効いた部屋で一日中居たんですか?」
部屋に入った修は、左にあるロッカーを開け、ハンガーに吊るされているベージュ色の服を取
り出した。
「そうでもないよ。一日中、人工的な風に当たってるのは健康に悪い。この夏が終わる前にクソ暑い日差しを浴びながら海で寝転がりたいもんだ」
庵原はピアノを弾くような仕草でパソコンの置かれた机の上を指で叩いた。
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