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それでも今の私には、この言葉が始終、浮かぶものであるのです。
浮かぶと言えば、清流に、梅の花弁が小さな花筏を作っていました。可憐なわだかまりが流れの中で、浮きつ沈みつしておりました。まるで私の心のようです。そうして私は、私の心の在り様から、貴方の心までを手繰り寄せようとして、宙に手を彷徨わせるのです。
心を手繰り寄せようとすれば、貴方と出逢ったあの日まで、時間をも手繰り寄せようとしてしまいます。
貴方が私の家に書生として寄宿していたのは、もう何年も前のことになるのですね。
父から紹介された貴方は、緊張していたのか固い口調で、私に丁寧な挨拶をしました。彼は今に、国の頭脳になるよと、そう父が朗らかに、上機嫌に言ったことを憶えています。
そうすると貴方は恥ずかしそうに。
含羞の色を頬のあたりに宿していました。
貴方は生真面目な上に照れ屋で、お仲間の人たちと国勢について話し合っている最中でも、私が通りかかるとぴたりと口を閉ざして畏まっていました。
私は少し、寂しく思ったものです。
寄宿先の娘と書生。
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