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その領分を厳格に線引きしようとする貴方の態度は、立派とも言えたかもしれませんが。
私のような物を知らない小娘にも、国の中で何かざわめき、一触即発の事態となっている雰囲気は感じ取っていました。貴方のように学のある方なら、尚のことであったでしょう。熱に浮かされたように、国は激戦の、その泥沼へと突き進んでいきました。
物資が乏しくなり、配給制が始まり。
戦地に赴いた父が生きて帰ったのは僥倖でした。
けれど貴方は戻らなかった。
梅の花咲く頃でした。
春告草が告げたのは、貴方の戻らぬという報でした。
貴方は真っ白な、四角い箱となりました。中には骨さえありません。その箱を抱き、泣き崩れた私を、貴方はご覧になっていたでしょうか。
生きて戻れば、と言って貴方が差し出した梅の花。
おかしなものです。
貴方が行ってしまったのも、そして逝ってしまったと知ったのも、梅のほころぶ時期でした。春告草は、私の恋の節目に、確かに大切なことを告げたのです。
はるか遠くに出すこの手紙に、返信はまたないことでしょう。
貴方はそちらにいる。
私はこちらにいる。
両者の間を隔てる川は深く、流れは速い。そして私にはその水に、身を浸す勇気がありません。
臆病者です。
それでもいつか、と信じて良いですか。
いつか貴方に逢える日が来ると。
春告草を見る年数え、私はその日を待つでしょう。
そちらに行けば貴方はきっと、あの含羞を宿す頬で、私を迎えてくれるでしょう。
今日の空は突き抜けるような青い空。
本当の春を待ち侘びながら、この手紙に封をします。
この心に封をします。
かしこ
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