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大体、前からよく言われてた。前っていうのは本当に前で、小学校の高学年くらい。我ながらよく覚えてるもんだ。
近所の真っ黒に日焼けした幼馴染みのヤツにお前らイイトシして兄妹で仲良すぎキモいって笑われて、同じグループの他の仲間も賛同、腹抱えてその頃乗り回してた自転車のサドルを叩いて爆笑。それを見て俺も笑う。お前ら手ェヤバくない?って。夏休みの宿題で描いた絵日記の太陽みたいに赤く腫れた友人達の手のひらを見て、またみんなで笑う。近くて遠い記憶。幼き日の俺は大多数の意見に迎合するように最後に残ったグラグラの乳歯を丸出しにして笑顔を作っていた。
その輪に入っているのに、遠慮気味にニコニコしている4つ下の妹が、俺を見た。明るい日差しの下、色素の薄い虹彩の中心で瞳孔がブワッと大きくなる。猫の瞳を思い出した。
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