それはだって、大切だから。

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 思えば、近道しようなんて提案した私がばかだった。  学校からの帰り道、歩道に溶けた雪が砂ぼこりと混じって汚くて、私は新調したブーツが汚れていくのが少し哀しかった。だから、道路脇のこじんまりとした公園を横切ろうって言った。  公園の中は五センチほどの雪が残っていて、私の目に映るそこはとても綺麗にみえたから。  でも、言ってすぐに後悔した。だって彼が履いているのは普通のエナメル靴だったから。  すぐに撤回しようと思ったのに、それより先に牧人君は私の背中に回って肩に手を置いてこう言った。  「よし、いこう。その代わり、心奈が先に歩いて足跡つけろよ。俺がその上を歩くから」  私よりサイズが二センチ大きいから、私の足跡じゃカバー出来ない。  やっぱりやめようと言いだそうとした時、牧人君は公園に向かって私の背中を押した。  「ちょっと、押さないで。押さないでってばぁ」  言いながら振り向いたときに、ちらっと見えた私のカバンで揺れるプレファーちゃんは、そこに確かにあった。  あったのに‥‥‥
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