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公園を出てすぐだった。
出口まで来て、振り向きながらカバンを両の手に持ち直して、ありがとねって言いながらお辞儀をした時、それまでそこで揺れていたプレファーちゃんがいない事に気が付いた。
私はショックのあまり、その格好のままで固まってしまった。やばい、泣きそう。
「心奈、どうした?」
いつまでもお辞儀の姿勢のままの私の頭を、牧人君がその大きな手のひらでポンポンってしてくれた。その瞬間、ぎりぎりまで我慢していた私の涙腺が一気に緩んでしまう。
「おい、心奈ってば‥‥‥」
牧人君が少しかがんで私の顔を覗き込んだ。
私は耐えきれなくなって、牧人君の胸に思い切り顔を押し付けた。
「プレファーちゃんが‥‥‥い、いないの」
牧人君の体が少し左に傾いたのが分かる。きっと私のカバンを覗き込んだんだ。
「ごめん‥‥‥ごめん」
牧人君はまた私の頭にその暖かい手を乗せると、今度はやさしく撫でてくれた。
「泣くなよ。気にすんな、な。また買ってやるからさ」
「でも、でも‥‥‥」
プレファーちゃんじゃなきゃダメ。牧人君が初めてくれたプレファーちゃんじゃないと、意味がないの。そう言いたいのに、言葉が出てこない。
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