2 美桜

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幸い、負けん気の強さと、同級生の誰にも負けない読書量のお蔭で勉強は出来た。 高校生活はコンビニのアルバイトに精を出し、必死にお金を貯めて進学の資金にした。 もちろん一般入試で何校も受験するような余裕はないから、普段からテストの成績をキープして、高校三年の秋には指定校推薦で大学が決まった。 入学金と半年分の授業料を振り込めば、後は奨学金とバイトでなんとかやっていけるだろう。 早く大学が決まればバイトも続けられるし、残り半年でまたお金を貯めて、卒業と同時にアパートを借りることができた。 そこは、小さなワンルームのアパートだった。 大学には学生寮もあったけど、私は一人暮らしを選んだ。 生まれた時から集団生活を送ってきて、寂しい時や病気の時、誰かが傍にいてくれる安心感はあったけれど、元々一人で考え事をしたり読書をするのが好きな私には、一人になりたいと思う時の方がずっとずっと多かった。 自由と引き換えに孤独を、守られていた子供時代と引き換えに自己責任を。 自ら選び取ったことになる。 ひかり園では朝夕の食事はだまっていても出て来たけど、一人暮らしでは全て自分で用意しなきゃならない。 小さな部屋だから掃除は大したことないけれど、洗濯は週に二、三回近所のコインランドリーに通った。 家電は最低限。食器やインテリアは百円ショップで少しずつ揃えた。 唯一の贅沢は生まれて初めて携帯電話を持ったこと。 アパートを借りたりバイトの連絡をしたり、大学とのメールのやり取りにも必要不可欠とわかり、一番安い機種を買った。 これで『寂しくなったら電話してね』と言ってくれた優子先生ともいつでも話ができる。 私にとって一人ぼっちの心細さを和らげてくれる、一番大切なものになった。
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