2 美桜

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「あ、はい。北里美桜です。よろしくお願いします」 挨拶をしながら、私はその黄色い頭から目が離せなかった。 なんで、なんで金髪? 昨日まで黒かったよね? そもそもうちの店って金髪アルバイト、認めているんだったっけ? 次々に疑問がわいてくるものの、正面から聞けるはずもなく、一緒にカウンターへ入ると簡単なことから仕事を教えていく。 見た目が金髪なだけで、受け答えはとても真面目だった。 口数は少ないけれど挨拶や接客も丁寧で、掃除や重い物の移動なども積極的にやってくれる。 遅刻や無断欠勤なども一切無く、その実直な働きぶりは感心するほどで、ますます金髪とのギャップが疑問を呼ぶ。 時々休憩が一緒になることがあっても、ほとんど向こうから話しかけてくることはない。 お客さんだったときのように私の事をじっと見ていることもなく、むしろ目を合わせてくれなくなってしまった。 やっぱりあれは私の勘違いだったんだな、と思いながらも気まずさから声を掛けると、ぽつぽつと答えを返してくれる。 同じ大学の三年生。 学部が違うので、大学で会ったことはなかった。 とても若く見えるので、二つ年上なのは意外だった。 以前はどんなバイトをやっていたか聞いた時、これが初めてと言われたのも驚いた。 食事をする時の箸の使い方や食べ方がとてもきれいで、普段着のダウンジャケットやスニーカーはブランドものみたいだし、重そうなスポーツタイプの腕時計は高級品だと他のバイト仲間が騒いでいた。 ますます金髪とのギャップがわからない。 バンドをやっているとか?学園祭の出し物のためとか? 今日こそ聞いてみようと思いながらなかなか聞けないまま、時間だけが過ぎて行った。
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