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そしてクリスマスイブの朝。
私は体の震えで目が覚めた。
起きた瞬間から寒気が止まらない。
時計を見ると朝の八時。今日のバイトは十一時からだ。
午前中に買い物に行って、一度帰ってからバイトに行って、午後七時には終わり、七時半から一人クリスマスを楽しむ。
予定だったのに…。
ゆっくり起き上がったものの、ずきずきする頭痛に「うっ」とうなり、再び布団の中に突っ伏した。
真冬の北海道で、外は氷点下。
時々どさっと屋根に積もった雪が落ちる音が聞こえる。
部屋の中もひんやりとして、吐く息が白いことに気付いた。
おでこを触っても特別熱い気はしなかったけど、この寒気を考えるとこれから熱が上がってくるんだろうと予感した。
とりあえず部屋の温度をどうにかしないと。
中古で買った小さなファンヒーターのスイッチを入れると、一気に部屋の温度が上がってほっとする。
最初に考えたのは「インフルエンザ」だったらどうしよう、だった。
近くに病院なんてあったかな。耳鼻科は見たことあるけど診てもらえるのかな。
札幌に来てから病気になったのは初めてだった。
常備薬を見てみると、絆創膏と消毒薬と生理痛の薬しかない。
頭痛はこれでもおさまるかな。でも何か食べないと飲めないな。
何か…食べなくちゃ。
頭ではわかっていてもからだがだるくて動けない。
私は枕に頭を落とすと、そのまま眠ってしまった。
高い電子音のメロディーが聞こえる…。
「キラキラ星」だ。なんだっけ、これ。どこから聞こえるの?
うっすらと目を開けると同時に「ぷすん」と音がして、ファンヒーターが止まった。
え?止まった?
そうだ、さっきの「キラキラ星」は灯油が切れた時の、私が大嫌いな終了の合図だった。
そして同時に、三日前に灯油を淹れた時にタンクが空になったことも思い出した。
今日買いに行くつもりだったんだ…。
どうしよう。絶望しかない。
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