2 美桜

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「あれ、仕事してる?」 指を差された小さなファンヒーターは昼間から沈黙していた。 「灯油切らしちゃって…」 「ええっ!エアコンは?」 「ないです」 「こたつとか、ホットカーペットとか」 「ないですね」 「…」 呆れて声も出ないのかと思ったら、突然自分が巻いていた長いマフラーを外して、私の首にぐるぐると巻きつけてきた。 「えっ」 と驚いているとニット帽も脱いで私の頭にかぶせると、ぎゅっと引っ張って耳まで覆った。 うん、すごく温かい。 だけどなんで? 驚いて何も言えない私に 「待ってて。てか寝てて。布団に入ってていいから。鍵貸して」 そう言って手を差し出す。 反射的に玄関の横のフックに掛けてある鍵を渡してしまった。 「心配しなくていいよ。じゃ。ちゃんと閉めてね」 心配って…鍵の事かな。 言われた通りドアのカギを閉めると布団に戻った。 重ね履きしている靴下といい、マフラーに帽子までかぶって布団に潜り込む自分が何だかおかしかった。 冬の山小屋ってこんな感じかな。 それにしてもこのマフラー、すごく温かい。 軽くて表面がしっとりしていて、もしかしてカシミヤとか? 私にはよくわからないけどきっとすごく良いものだと思った。 「そういえば今日、クリスマスイブなんだよね」 小さな丸いテーブルに乗せた白い箱と、その隣に飾ってある百円ショップの小さなクリスマスツリーを見ながら、そう思った。
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