2 美桜

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一時間後… ガチャっと鍵が開く音がして顔を上げると、ドアが開いて紺のダウンジャケットを着た金髪の人が入ってきた。両手に持った荷物をどさっと置くと、パタパタと雪を払っている。 「…おじゃまします…」小さな声で言うと靴を脱いで上がった。 布団の中から顔を覗かせている私と目が合うと 「大丈夫?」と言いながら部屋に入ってくる。 「う、うん」 「灯油、持って来たから。ポンプある?」 ポリタンクを持った片手を上げて聞かれたので、「玄関の横」と教えると取りに行き、すぐにファンヒーターの容器に灯油を入れてくれた。 スイッチを入れると「ぼっ」と音をさせて息を吹き返し、仕事を始める。 ほんのり灯油の匂いと一緒に温かい空気が流れてきて、ほっと息を吐いた。 「灯油切らすとか。札幌の冬を舐めてる?」 「そんなことないです。道産子だし」 「そうなんだ。どこ?」 「小樽」 「お、いいとこじゃん。はい、これ」 紙袋に入ったものを渡してくれたので中を見ると、体温計と解熱剤、保冷剤にマスクまで入っていた。 「まず熱測って。薬はまだな。あと、これ飲んで」 スポーツドリンクのペットボトルを渡されて、そういえば水分も取っていなかったと思い出した。 「キッチン借りるよ」と言って立ち上がると、スーパーの袋からアルミの鍋に入ったうどんを二つ取り出して、直接コンロで火にかけた。 すぐにぐつぐつと何かが煮える優しい音と匂いが漂って来て、胃袋がぎゅっと存在を主張し始めた。
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