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「鍋敷きある?」と聞かれて首を振ると「これでいいか」と手近にあった広告を何枚か重ねてテーブルに置き、その上に鍋焼きうどんを乗せてくれた。
「俺も一緒に食べていい?」
「もちろん」
こくこくと頷くと嬉しそうに笑って割り箸を渡してくれた。
「熱どうだった?」
と聞かれて体温計を渡すと「九度?!」と叫んだ。
自分で見ていなかった私も一緒に「ええっ!」と叫んでみるがどうしようもない。
「今から病院…救急探してもいいけど、かなり雪降ってるから外出るのも辛いよな。今日はこれ食べたら薬飲んで寝て。明日病院連れて行くから」
私はその言葉に驚いてしまって、慌てて首を振った。
「そんな、ご迷惑かけられません。病院は自分で行けるので。こんなに色々買って来てもらって…ちょっと今手元にお金ないんです。明日下して返しますから」
「いいよ。俺が勝手にやったことだから。そんなことより早く治さないと」
「そんなわけには。お金も返すし、何かお礼をさせてください」
綺麗な手つきでうどんを食べていた高瀬さんは、そこでピタッと手を止めると
「じゃあ、これ」
と言ってテーブルの端に置かれた白い箱を指差した。
「これ?ってクリスマスケーキ…」
「うん。一緒に食べたい。いい?」
私の箸を持つ手もぴたりと止まって。
「じゃあ、はんぶんこしますか?」
と聞くと
「やった!」
とあの子供の様な笑顔を見せた。
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