2 美桜

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私はペロッとうどんを食べた後、ケーキの箱を開けた。 小さなやかんでお湯を沸かしてくれた高瀬さんにマグカップとティーバッグの場所を教えて、紅茶を入れてもらう。 半分に切ったケーキをお皿に乗せて「メリークリスマス」と言うと、高瀬さんも照れくさそうに「メリークリスマス」と返してくれた。 一人で過ごす以外のイブを想像もしていなかったので、不思議な気分だった。 マグカップとケーキ皿を二つずつ買っておいて本当に良かったと思った。 あとの食器はお茶碗もお椀もどんぶりも、一つずつしか買っていないのだから。 そして、これを聞くのは今日しかないと思った。 「聞いてもいいですか?」 「うん」 「その髪の毛…どうして金髪にしたの?」 「え。最初から金髪だよ」 「ううん。お客さんで来ていた時は黒かったでしょ」 「え!覚えてたの?!」 心から驚いたって顔で言うので、こちらの方が驚いてしまった。 「もちろん。はんぺん、ちくわぶ、たまご、こんぶ…時々肉まん」 「…そんなことまで?」 「ふふ。密かにおでんくんって呼んでたから」 そう言うと「ぶはっ」と笑って「なんだ作戦は成功してたんだ」とつぶやく。 「作戦って?」 高瀬さんはしまったという顔をすると、目を伏せて顎を掻いている。 どういう意味?首を傾げる私に 「まいったな…顔を覚えて欲しくてさ。毎日同じ時間に同じものを買ったら覚えてもらえるかと思って」 「うん。覚えてましたよ」 「だけど、俺普通じゃん?身長も体型も日本人男性の平均ぐらいだしさ。顔もよくいる感じだし。あのコンビニでバイト募集しているのを知って面接通った後、なんとか印象強くしたいと思って髪の毛脱色したんだ。生まれて初めて」 「えー、そうだったの…ってまさか…私に?」 「うん…やべ。ここまで言うつもりなかったんだけど…どうしよ」 急に落ち着かない様子で両手で目を覆ってしまった。 耳まで真っ赤にしている。
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