3 マイホーム

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ふっと目を覚ますと、白い天井が見えた。 なんだか懐かしい夢を見ていたような気がする。 大学時代に住んでいた札幌のアパート。 慶ちゃんと出会った頃のことだ。 たまらなくあの笑顔が見たくなった。 事故で生活は一変してしまった。 引越しをしてからは夏休みを楽しく過ごしながら新学期の準備をするつもりだったのに。 慶ちゃんと子供たちは新居で生活しているのに、どうして私だけがこんな所で…。 とマイナス思考に落ちかけて、慌てて首を振った。 いやいや、家族が元気で良かったんだ。 慶ちゃんが入院したり、子供たちが大怪我したりしてたら、心配でたまらないもの。 赤ちゃんも無事だったんだから、文句を言ったら罰が当たるよ。 家族が一番。 私の宝物なんだから。 そう思って自分を納得させていると病室の扉がノックされた。 「高瀬さん、検温ですよ」 「はい」 三好さんという三十代前半ぐらいの看護師さんが毎朝来てくれる。 体を起こして体温計を受け取ると 「体調はどうですか?お腹の張りは?」と優しく声を掛けてくれて、「大丈夫です」と答えるのが日課になっていた。 慶ちゃんは仕事が忙しいのか、夜しか来てくれない。 子供たちは日中預かってくれる場所を見つけたとかで、「心配ないから」と詳しくは教えてくれない。 私の話し相手は看護師の三好さんだけだ。 毎朝慶ちゃんに 『おはよう』 とメールを送ると 『おはよう。今日も夜に行くよ』 と返事が来る。 そして病院の早い夕食が終わる頃を見計らって、三人でやってくるのが習慣になっていた。 私の入院生活は一か月に及ぼうとしている。 交通事故だったことと妊娠中ということもあって、個室に入院することになり、気兼ねはいらないけど話し相手もいなくてつまらない。 入院に必要な着替えやタオル類などはレンタルでお願いしているので、洗濯ものや着替えの心配もいらなかった。 便利な世の中になったものだ。
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