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じっとベッドに横になっているせいか、赤ちゃんは順調に育ち、車椅子で産婦人科へ検診に行った時も「問題ないですよ」と言われて安心した。
食事も入院食だから栄養や体重管理に役立っているのだろう。
あまりおいしくはないので、そこだけはなんとかして欲しかったけど。
後は足のリハビリで軽い運動をしたり、休憩室から借りた雑誌を見たりしているうちにやっと夕食の時間になる。
窓の外がすっかり暗くなった頃、病室の扉がガラッと開いて
「ママ!」と大樹が飛び込んできた。
「大ちゃん!」
真っ直ぐ私の胸に飛び込んでくる息子を抱きしめると
「もぉ、大樹、ママは怪我してるんだから飛びついちゃダメって言ってるのに」
と大人びた声が聞こえた。
「優芽もおいで」
声を掛けると「ママー」と甘えてくる。
いつもはお姉ちゃんとして頑張っている優芽も抱きしめて、たくさん頭を撫でてあげた。
最後に入ってきた慶ちゃんには「お疲れ様」と声を掛けて、子供たちに話をする。
「新しいおうちはどう?パパがいない時は寂しくない?」
「うん!さびしくないよ」
「毎日たのしいよ」
何を聞いてもそんな風に答える子供たちが、本当は辛い思いをしているんじゃないかと心配になる。
「何でもママに話してね」
「うん。ねぇママ、赤ちゃんは元気?」
「うん、元気だよ。ほら、お腹こんなに大きくなってるの」
布団をめくって丸いお腹を見せると、ベッドによじ登ろうとする大樹を慶ちゃんが抱きかかえた。
「パパ、優芽も!」
とすかさず手を伸ばした娘の事も慶ちゃんはひょいっと抱き上げて、大樹と反対側に乗せ上げた。
自分は椅子を引き寄せてすぐ傍に座る。
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