1 夢ならば

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「慶ちゃん、大丈夫?疲れてない?」 「大丈夫だよ。昼間温泉で仮眠したし。美桜は大丈夫?少し休むか?」 「ううん、大丈夫。このまま家まで行ける?」 「うん。明日の朝には引っ越しのトラックが着くだろうし」 私達は今回の転勤に合わせて、神奈川に家を買った。 去年から告知されていたので、時間をかけて準備することができた。 優芽は小学校を転校するし、大樹も新しい幼稚園に入る。 そして、私のお腹には三人目の赤ちゃんがいる。 妊娠七か月。 十月の頭に出産予定だった。 しばらくはこの地にいることになると思い、家を買うことにしたのだ。 札幌では社宅住まいだったので、まさに夢のマイホームだった。 「新しいおうち、楽しみだなぁ。優芽の部屋あるんだよね?」 「あるよ。大樹の部屋もあるからね。二階から海が見えるから、リビングは二階にしたんだよ。ママも完成してからは写真でしか見てないから楽しみだなぁ」 羽田空港の近くでは数分おきに飛行機が飛んでいるのを間近で見ることができたし、工場地帯ではオレンジ色の灯りが瞬いていて、いくつもの煙突や大きなタンクが見えると子供たちははしゃいでいた。 「あ、白い橋が見えるよ」 「鶴見大橋だな。もう神奈川県に入った」 「あれ、ベイブリッジじゃない?」 「うわーきれーい!」 夜はほとんど灯りが見えない東北の高速道路と違って、どこもかしこもキラキラしている湾岸高速をひた走り、車は横浜市に入った。
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