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「美桜!大丈夫か、美桜!」
「ママ、ママ目を開けて」
「ママ、お願い。ママが死んだら赤ちゃんも死んじゃうよー」
ふいに聞こえてきた、私を呼ぶ家族の声…。
一体何が起こったの?
狭い何かに体を挟まれている感触だけはわかったけれど、何一つ動かすことができない体と、息が苦しくて声も出せない私は何も答えられないまま、また意識が遠のいて行くのを感じていた。
折り重なるように私の腕の中にいる小さな息子を感じながら、全ては暗闇へ堕ちて行った。
それからどのくらいの時間がたったのだろう。
真っ暗闇の中から、自然に覚醒する意識。
目を開けたいのに瞼が重くて開けられない。
代わりに体を動かそうとしても、全身が痛くてどこも動かすことができなかった。
自分がどこかに寝かされていることはわかった。
「…ううっ」
「美桜っ」
慶ちゃんの声が聞こえた。
私はどうしちゃったんだろう。
目は開けられないまま、声を振り絞った。
「けい、ちゃん」
「美桜、気が付いたんだな」
「なに、なにがあったの」
「事故だよ。対向車が突っ込んできて、ハンドル切ったけど避けられなかった」
「けい…ちゃん、顔見えない」
「シートで顔面を打って、かなり腫れてる。無理するな」
「みんな、は?」
「うん。ここにいるよ」
「ママ!優芽はここだよ」
「大樹もここにいるよ」
子供たちの声にほっとして涙がこぼれた。
最後に聞くのが一番怖かったことを、思い切って聞いた。
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