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「赤ちゃん、は」
「大丈夫だ。やっぱり運転席の後ろにいて正解だったな」
私は安堵の息を吐きながら、心の中で文句を言った。
何言ってるの?
運転席の後ろが一番安全だからママが座ってってみんなに言われて、ありがたく座らせてもらったのに、どう見ても私が一番重症じゃない。
私はなんとか片手を動かすと、自分のお腹に当てた。
そこはまだ大きく膨らんで、小さな胎動を感じた。
思わず安堵のため息が漏れる。
「ここ、病院?」
「うん。しばらく入院になるみたいだ。足の感覚あるか?」
「あ、し?」
もぞっと動かそうとしたけど、右足がわずかに反応しただけだった。
そう言えば左足の感覚がないみたい。
「左足、複雑骨折で手術したんだよ。シートに挟まれたらしくて」
すーっと気が遠くなるのを感じた。
複雑骨折で手術?
あの事故からどのくらい時間がたってるの?
「美桜?しっかりしろ。美桜!」
あ、これ貧血みたい。
無意識にお腹に手を当てたけれど。
耳元で叫ぶ慶ちゃんの声が再びフェードアウトした。
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