蠱毒みたいだね

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「これってさあ、なんか蠱毒みたいだよね」  大きな目を細めて、君は笑って僕を見た。  僕らの前にあるガラステーブルの上には、空っぽの白い箱が置いてある。  僕らはそこにお互いの好きなところと嫌いなところ、それ以外にも思っていることを次から次へと入れていく。 「毎日好きって言ってくれるところが好き」 「寝相の悪さどうにかしてくれ」 「ゴミの分別ちゃんとして」 「この間の麻婆豆腐、やけに本格的で美味しかったなあ。また作ってよ」  もちろん、形なんてない。言った側から空に消えてなくなる前に、パッと手で掴み箱に入れていく。そんな感じ。そうあくまでも感じだ。だから見た目に箱がいっぱいになるわけもなく、いくらでも入れられる。 「よし。そろそろいいかな」 「うん」  僕は想いの埋まった箱にフタをして、漏れないように回りをガムテープで封をしていく。 「できた。じゃあ一ヶ月後に開けるから、それまでは触らないように」 「はい、はい。分かってるわよ」  一ヶ月後は僕らが一緒に暮らしてちょうど三年目。このオママゴトのような儀式も三回目だ。  箱に埋まった僕らの想いは、この一ヶ月で一つになる。清濁関係なく、お互いの想いが混じり合い一つになる。そしてそれを二人で掬い上げ飲み込む。  どんな想いだって、二人で共有して混ぜて飲み込んで消化してしまえばいい。  それが僕らの尊い儀式。  二人だけの秘密の。
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