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梅雨独特の、湿気を含んだ重い空気が身体に纏わりつく。
あと数時間で帰宅の途につけるのだが、朝から降り続く雨は一向に止む気配をみせない。
出勤途中に雨に濡れた服と靴は、まだしっとりとはしているが、気化熱もあってかようやく乾きそうな気配をしているのに、また濡らすことになるのかと思うと、げんなりする。
帰ったらすぐに洗濯機に放り込まないと、しつこい泥の汚れは落ちないだろう。車で通勤しているにも関わらず、どうしても雨に濡れてしまう理由があった。
入居当時、マンションの住民専用地下駐車場の空きが無く、徒歩五分ほどの月極め駐車場を借りていた。値段の安さで決めたせいか、舗装はされているものの水捌けが悪く、雨の日は大きな水溜まりがいっぱい出来ていて、慎重に歩いていても泥はねしてしまうのだ。
ここのところ、天気予報の的中率は上昇中。今日が雨なことは分かっていたので、昨日のうちに食材は買い溜めしておいたし、こんな日は早く帰って部屋で寛ぐのが一番だ。濡れた服はさっさと着替えて温かいコーヒーを煎れて。
そうだ、最近買ったDVDをまだ見てなかった。あれを見てもいいし、DVDと一緒に買ったCDを聞くのもいい。偶然見つけた、昔好きだったバンドのボーカルのソロアルバム。十年以上、まだ音楽活動してるのか、ずっと捜していて、諦めかけてた今になってようやく見つけた。
CDを聞きながら本を読むのもいい。学生時代から買っている雑誌。なんとなく惰性で今も購入し続けているが、買ったことに安心してあまり中身を読まずに置きっ放しにしている。せっかく買ってるんだから、ちゃんと目を通してみるか。
晴れには晴れの、雨には雨なりの楽しみ方がある。
ふと逸らした視線の先、誰かが半分まで開けた窓から霧のような雨が吹き込んできていた。窓際に置いてしまった書類を濡らしている。
ああ、窓を閉めないと、どんどん吹き込んでくるな…と頭の片隅で考える。
捨てようと、焼却場に持って行こうとしていた書類だし、濡れてしまっても構わない。でも床が濡れたら掃除するのが大変か。けど、掃除にしたって自分がするんじゃないから、どうだっていいことかも知れないが。
訥々と他愛もないことを思い巡らせていた。
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