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18.pure
アセクシャル、あるいはエーセクシャル。どう読むのかは知らないけれど、何故か表記はAセクシャルという合成表記で統一されていた。
pureと名づけられたそのサイトは、開設者の日記と、そこから抜粋したというAセクシャルについてのコラムと、それから複数の掲示板で出来ていた。
Aセクシャル──恋愛感情を理解出来ない。セックスが理解出来ない。恋愛とセックスが結びつけられない。色んなタイプがあるけれど、要するに恋して寝ることが当たり前と解釈することがどうしても出来ない。心情的に理解出来ないだけでなく、実際に接触が出来ない人もいる。不能とはまた違うのだ。いうなれば肉体の性的機能不全ではなく、心の性的機能不全なのかも知れない。
そんな想いを抱えた人間は、自分だけではなかった。自身をカテゴライズすることが出来た。それだけでこんなに救われるだなんて、考えてみたこともなかった。
しかしそれにしても、どうしてこんなサイトをツトム(仮名)が知っていたんだろう。
その疑問を翌日会社でぶつけたら、
「ワタル(仮名)とミツル(仮名)を見てたら、ひょっとして他にもいるかもと思い始めたから、調べた」
という答えが返って来た。
「……ワタル(仮名)も?」
ちょっと違うような気はしなくもない。少なくとも女性とお付き合いするのに何の支障もなさそうだし。
「ああ、ミツル(仮名)はそういう話すらひょっとしてダメかもとか言ってたな、そういや」
「……何が?」
「あいつ童貞だって知ってた?」
目が点、という言葉はまさにこの瞬間のためのものだった。少なくとも当時の俺には。
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