no_sex_is_life

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31.フェイクの男  ワタル(仮名)は自分自身を偽ることでしか社会に適合出来ない自分に苛ついていた。ツトム(仮名)は、少なくとも表向きには何も繕っているようには見えないけど、実際はどうなんだろう、と聞いてみたことがある。  考えたこともない。それがツトム(仮名)の答えだった。自分はいつも好きなようにしか生きてないから。  衝撃だった、とワタル(仮名)は言う。  おたくだとかいう表面的な属性なんてもう問題じゃなくなっていた。その時には。  ただ人間関係の考え方について、2人の間には微妙な温度差がある。ワタル(仮名)は今でもツトム(仮名)の実体が何処にあるのかはよく判らないと(それは俺も同意)。  時々、おたくであることすらフェイクなんじゃないかと思うこともあるけど、と笑っている。もしそれが本当だったら、ちょっとシャレにならないかも知れないと思ったりもする。  俺たちは割と色んなことをさらけ出しちゃってるのに。相手は決して自分の本当の姿を見せようとしていないのかも。そう思うとそこはかとなく不気味。
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