no_sex_is_life

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37.悪い意味で特別な人  俺は人の顔を覚えるのが不得意だ。だから、ツトム(仮名)が昼休みに鉢合わせて微妙に不機嫌になる相手が、ある特定の1人であることに気づくのがだいぶ遅かった。  まあ要するにはっきり言えばツトム(仮名)は彼が苦手なのだ、ということが俺にもやっと理解出来た訳だ。  いずれにせよ、社会的にはそこそこ中庸に潜伏することにかけては天才的な「ステルス機」ツトム(仮名)が、俺みたいな鈍いヤツにまでバレるほどに人を避けているのは珍しい。少なくとも俺とワタル(仮名)が知る限りでは初めてだ。  職場が近いし、時間は限られているし、食事をすることの出来る店の数もそれほど多くはないし、だからそれなりの確率で同じ店にいる。そうじゃなくても道端で会う。そのたびにツトム(仮名)はほんの少し無口になる。  俺は、逆にかなり興味が湧いてしまった。前々から、ある意味ではツトム(仮名)という人そのものには得体の知れなさみたいなものを感じていたし。  彼はツトム(仮名)の何を知っているのか、あるいは逆に、ツトム(仮名)は彼の何を知ってあんな態度に出てしまうのか。好奇心が頭をもたげていた。
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