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41.「苦手」の理由
「……好かれるの苦手?」という俺の質問には、
「人による」とシンプルな答えが返って来る。
「俺なら平気?」
「いやミツル(仮名)は変に俺を神格化したりしないから」
「そりゃツトム(仮名)の色んな面を知ってるから。マサヤ(仮名)さんは『女性を救ったヒーロー』な面しか知らないから憧れられてるんじゃない?」
「かと言って聞かれもしないのにカムアウトする必要もないし」
アキバ系な面を、という暗黙の一言を諒解して、
「でもカムアウトすれば嫌ってくれるかもよ」
「……いや別に嫌われたい訳じゃない。そもそも関わりたくないんだ──出来れば。もう遅いけど」
うん。もう遅い気がする。というか、このまま避けてると相手はますますツトム(仮名)を偶像化して突っ走りそうな気配。なんとなーくそういう性格の人に見えた。
ええと。思い込み激しい妄想体質というか。
その危惧をぽつんと口に出したら、ツトム(仮名)は、彼にしては本当に珍しく弱り切った声で「そうなんだよなあ……」と呟いた。
ちょっと前までサトコ(仮名)さん関係で色々弱ってた俺を引っ張り上げてくれた人だけに、俺は何とかして彼の役に立てないかなあと内心思っていた。
とはいえ、何処までが親切で何処からがおせっかいなのか、自分にその線引きがきっちり出来るかどうかの自信がなかったので、積極的に行動に出ることは結局しなかったんだけど。
それからしばらくして、今度は残業した帰り道にマサヤ(仮名)さんにとっ捕まった。
あの日の昼会談(?)とは打って変わって、かなり神妙で少々ヘコみ気味に見えるその青年は、1時間ほど時間をくれませんかと俺に言って来た。
これはツトム(仮名)側のもやもやを伝えるいい機会かも知れないと思ったので俺は承知し、スターバックスの片隅に腰を落ち着けて話すことに。
ところが、この日の話で、マサヤ(仮名)さんとツトム(仮名)の間には恐ろしく巨大な海溝が口を開けていることが判明してしまった。
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