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44.Aセクシャルというグラデーション
携帯のAセクシャルサイト「pure」の掲示板に書き込んでいる常連の中に「alex」というハンドルを使っている人がいた。書き込む時の1人称は「僕」だけど、ネットではそれで性別を特定出来る訳ではないので、本当はどっちなのか判らない。
そのalexの書き込みを見るたび、俺は彼(ということにしておく、今の所)のポリシーにかなりの親近感を抱いていた。
Aセクシャルを自認する人たちの性志向は、その一言で同類にまとめてしまえる程には同じではない。
恋愛がそのものが苦手な人もいれば無関心な人もいる。接触についても同様。キスや抱きしめることなどは出来てもセックスが出来ない人。やれといわれれば出来なくはないけど興味がないからどうでもいい人。性的な話くらいは平気な人、話をするだけでも嫌な人。恋愛は出来ても接触が苦手な人。
恋愛がかろうじて出来る人については、さらに自分の性自認と相手の性自認で分けようとすればまた細かく分かれてしまう。同じAセクでも基本的な恋愛志向がノンケの人とゲイの人、バイの人、あるいはどっちにも何も感じないノンセクシャルの人もいる。
恋愛も出来るしセックスも問題ない人以外は、全てAセクの中に押し込まれているけれど、正直、Aセクの一言ではこの幅広さは荷が勝ち過ぎなのではないかと思う。掲示板でも、そのグラデーションが元になって小さな論争が起きることがある。
たとえば。
「恋愛出来るならAセクなんて名乗らないで恋をしてればいいのに」vs「恋愛が出来てもそれ以上に進めない辛さがあるからこそAセクを名乗っているのに」
「セックスだめならパートナーに(肉体的な)浮気を許可すべき」vs「それをOKにしたら特定のパートナーになる意味がないし、心情的に許せない」
……などなど。
Aセクシャルはただですら『敏感』な人たちだ。火種はいくらでもある。
そんな中で、恋愛に対して感じている違和感がことごとく同じ(ように感じる)人と出会うことは、逆に珍しい。
alexは俺にとってそういう存在だった。少なくとも掲示板での意見を見ている限りでは。
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