no_sex_is_life

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50.嫉妬出来ますか?  たまたま電話がかかって来た時、ワタル(仮名)に彼女のことを話してみた。彼は大袈裟なほど祝福してくれた。  その時に話したことが印象的だったので、思い出しつつ書き残し。  ワタル(仮名)は今まで本気で人を好きになったことがないと自称している。じゃあ、ワタル(仮名)にとって「本気」とは何か、と尋ねてみたのだ。  彼の中では既に答えは出ていた。その鍵を握るのは「執着と独占欲」。 「俺から相手を振ることはほとんどなくて、関係が終わるのってほぼ100%振られるからなんだけどさ。その中で誰かを引き止めたいと思ったことがないんだよね……」 「あがかないんだ」 「そう。嫌われたんなら仕方ないね、それじゃあ、って。  俺自身は、多分、そこであがきたくなった時が『本気』なのかなあと、うっすら思ってるんだけど」 「じゃ、別れ話をしないと本気判定が出来ないってこと?」 「いや。嫉妬出来るかどうか、もよく考える」  電話の向こうで少しだけ間があってから、 「あのさ。そのユカリ(仮名)さんが別の男と親しそうに話しているのを目撃したとして、ミツル(仮名)はどう思う?」 「どうって……彼女は男女とも友達はいるし、特に何とも」  答えてから誘導尋問っぽいと気がついた。ああ、そういうことか。 「そこでちょっとでも嫉妬出来るかどうかは分かれ目なのかな、と思う」  予想通りの言葉だった。 「……うん、答えてから気づいた」 「だろ?」 「ワタル(仮名)は?」 「同類だよ。今まで、何の感情も湧いたことがないから。サトコ(仮名)なんてそれで変に疑心暗鬼になってたし」  その名前で心の片隅がぴくりと反応。言葉には出さなかったけど。  ──そうか。彼女が俺と知り合うとしたら、普通はワタル(仮名)経由と考えるべきだ。もしかしたら2人の「戦い」の中で俺は何かしら駒に使われてたりしたんだろうか、と何となく。自分じゃ判らないけど。
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