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52.戦略的な浮気
実際にはそう提案した段階で計画は破綻してしまう。試しているのだということが判っちゃってたら意味がないからだ。本当に不意をつかれて目撃してショックを受けて嫉妬しないと、本物ではない……と思う。
いかに本当に嫉妬するか。そんなことに頭ひねるのも変だと思いつつ、2人してあれこれシミュレーションしてしまう。それがまた楽しいのだ。
「やっぱキスくらいしてる現場を目撃しないとダメかも。話してるとか手をつなぐくらいじゃ大したことないし」
「わかるなあ。さすがの俺もそれ見たら真剣に考えるかも」
「私もー。ミツル(仮名)さん、誰かとキスシーン演じてみてくれません?」
「無茶ですよ候補いませんって」
「私もいないな、参ったなあ……通りすがりの暴漢さん辺りに襲われるしかないかな」
「いやそれは嫉妬以前に正義感で止めに入るんで」
「あ、それもそうか」
とか冗談交じりにぽんぽん喋ってる。我ながら手に負えない類の楽しさ。
そんな訳で、お互いにお互いをどうやって嫉妬させるかという、カップルにしては不毛過ぎる会話は平行線に終わってしまった。やっぱり自分たちはセンサーがぶち壊れているんだね、と、益体もないことを確認して会話が途切れた。
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