繋がって

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「じゃあ、お前は自分で見つけた言葉に縛られたいんだな」 「もちろんよ。自分で見つけた納得のいく言葉に縛られるなんて素敵でしょ? わたしは言葉にも気持ちにも縛られたいのよ」 「それってさあ、見つかったら俺も聞けるのかな?」 「ふふっ。当然でしょ。あなたへの想いなんだから」 「よし! 分かった。じゃあ、俺はお前に中途半端な言葉は求めない。例え俺が死ぬ間際でも、お前が納得いかなきゃ、絶対口にするなよ。その代わり、お前が紡いだ言葉はどんなに陳腐でも受け取ってやる」 「ありがとう。でもね、あなたもちゃんと考えてよね。わたしへの想いがあるなら。わたしもどんな言葉でも受け取とるから」 「なんだよ。共有じゃダメなのかよ」 「もしも二人で同じ言葉を見つけられたら、それって凄くいいよね」 「そんなに上手くいくかねえ」 「ねえ、そろそろ熱くなってきたわ」 「俺もだ。きたな」 「ええ。きたわ」 「じゃあ、動くぞ」 「いいわ。動いて」    約三十分の繋がったままの会話の後。  暗く澄んだ空気の部屋を、ベッドがゆっくりと軋む音が埋めていく。  そして、その音に乗せて澄んだ空気に色が付いていく。  一週間に一度だけの二人の決め事。  確かに在るのに言葉にできない二人の感情が、徐々に混ざり合い、侵食していく。  言葉を探す二人だけの秘め事。  やがて、部屋は一色に染まっていった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加