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「言葉って便利だけど、全てが伝わらないでしょ?」
「そうかなあ。伝えたいから言葉ってあるんだろ?」
「それは当たり前。そういうことじゃなくて、例えばわたしのあなたへの感情。言葉にしようと思えばいくらでも思いつくけど、どれも正しくて、どれも違う気がする」
「じゃあ、無理に言う必要ないんだよ。納得のいかない言葉じゃあ軽くなるだろ」
「そう。だからわたしはいつもその言葉を探してるの。でも中々見つからないわ」
「それなら、いっそのこと創るしかないよね」
「創るって簡単に言うけど、先人達が必死になって、皆が抱く感情を集約して今の言葉ってあるわけでしょ? そこにある物や目に見える物には付けやすいかもしれないけど、感情に付けるって難しいわよ。だって口にする言葉は同じでも、その言葉の重みや色は人によって違うはず。しょせん大まかにとらえたものに過ぎないわよ」
「そりゃあそうだ。それは分かる」
「でしょ! だから、わたしだけの言葉を創りたいの。ねえ、知ってる? 外国には肩こりってないんだって。何でかっていうと、『肩こり』って言葉がないからなんだって。結局言葉がないと、あったとしてもないのと一緒なのよ」
「なるほどね。言葉にできなければ意味がないと。まるで言霊だな」
「まるでじゃなくて、そのままよ」
「昔、誰だったか『言葉にできないのが愛さ』って歌ってたけど、お前に言わせりゃあ、それじゃダメなんだな」
「他人はどうでもいいけど、わたしはダメね。それにふさわしい言葉を見つけたいわ。どれだけ時間がかかっても」
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