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少し広めの静かな和室に、池中組の先代とおっとりした雰囲気の中年の女性、組長の妻が二人、茶を飲んでいた。
「ふぅ……」
茶を飲み干した先代が、深い溜息をつく。
「まったく、あいつにも困ったもんだ」
「お義父様」
息子である組長のことを思い出して、苦々しく言う。
嫁が少し困ったような顔をしながらも、口元は緩く微笑んでいる。
「こっちが上手く別れさせようとしてやったというのに……」
「まぁ、最初から藤崎が相手にしてなかったんですから、仕方がないですわ」
息子の浮気など、とうの昔に察していた。自分も若い頃はいくらでもやっていたことだった。ダブル不倫なのもわかっていたし、嫁には悪いがどうせ遊びだろうからと、暫く放置していた。
しかし、女の方の夫が馬鹿をやり、警察に捕まる羽目になったのをきっかけに、女の方が離婚すると言い出したのだ。
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