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大学二年で二十歳の俺、高橋政人(タカハシマサト)と対して年は離れてないのは、彼女たちの普段の会話からでもわかる。
「今日もマサちゃん、可愛いね」
「それ、誉め言葉じゃないっす」
茶髪でツンツンした短髪に、二重で大きな目。四捨五入してギリギリ百七十センチ。母親似のせいで、若干童顔なのは認めるが、成人男性に『可愛い』はない。彼女たちにはいつも言われてるから、もう、慣れてはいるけど、俺にだって、なけなしの男としてのプライドってもんがあるんだけど。
そんな俺の気持ちなんか気にもとめていない彼女たちの綺麗な指先から渡されるチケットには、『牛丼並盛』と『サラダセット』と書かれてる。
「牛丼並、二つ~」
「は~い」
奥の調理場から聞こえてくるのは、リーダーの宇井さんだ。店長の小林さんが体調不良で休みになってしまったので、急遽出勤になってしまったのだ。それでも、文句一つ言わないで来てくれる。確か、今日は久しぶりの休みだったはずなのに。
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