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俺の他に、もう一人、バイト仲間で大学生の和田くんもいてくれるものの、俺たち二人だけだったら、店を回すことなんかできなかったろう。本当に、申し訳ないやら、ありがたいやら。
「はいっ、並二つ~」
「はいっ」
空いている食器を下げる俺と、入れ違いにお姉さんのところに料理を持っていく和田くん。顔がだらしないぞ、と、突っ込みたくなる。そのまま、彼女たちとおしゃべりを始めてしまう。まぁ、そんなに混んでないから、いいけど。
「いらっしゃいませ~」
和田くんの声に、厨房にいた俺もつられるように「いらっしゃいませ~」と声をあげる。食券の自販機の音とともに、注文の音声が流れる。牛丼大盛。この時間に牛丼大盛というのを聞くと、常連の宗さんかな、と、厨房から店の方に目を向ける。
――なんか店の中の雰囲気が、少しばかり緊張感をはらんでいるような。
その原因は、自販機の前に立っている、黒服でガタイのいいオッサンの存在だった。
ヤバイ。あれは、たぶん、『ヤ』のつく職業の人だ。俺には、すぐにわかった。だって、俺の身近にも、ああいう人がいるからだ。
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