閑話:オッサン、牛丼屋に通い始める

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 親父が病院に搬送された、という連絡が来たのは、若頭と共に新しく出来たという高級クラブに顔を出していた時だった。  オープン間もない時間帯のわりに、客がそこそこ入っていることと、クラブの中でもお気に入りの女が傍らに侍っていることもあってか、若頭も満更でもない様子だった。 「どうした」  電話を終えて店の中へと戻ると、若頭が不審そうな顔で問いかけてくる。  若頭お気に入りのホステスと和服姿のママに挟まれ、ラグジュアリーな革製のソファに長い脚を組んで座っている姿は、どこかのメンズ雑誌に出ているようなモデルのよう。  茶髪にウェーブがかった髪をなでつけ、整った顔立ちに、まだ独身で二十八という年齢、武原組の若頭という立場から、女たちからの熱い視線が集中している。
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