最初の注文は牛丼の大盛でした

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 今度はみわ子の兄が借金残して、ばっくれてしまった。  その保証人になぜかみわ子の名前が書いてあったせいで、せっかく入った保険金もパーになった上に、それ以上に借金してたせいで、みわ子が返済することになってしまった。  毎日のように来る借金取りに怯える日々に、俺もみわ子も、心中するかってくらい追い詰められたのは、俺が中学二年になった頃だった。  みわ子は水商売なんて、柄でもないことをして、身体を壊したのに、入院することもままならなかった。  いつもだったら、ドンドンと激しくドアを叩いたり、大声で『高橋さ~ん』『居留守使ってんじゃねぇよ』と騒がれたりする夜なのに、その日はピンポーンという音だけが鳴り響いた。  電気を消した狭いアパートの部屋の奥では、みわ子が不安そうな顔で横になってたから、ビクビクしながら、代わりに俺がドアスコープごしに外を見た。
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