母親は山ほどのケーキに困惑する

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「母親」 「なんだ、親離れできてないマーくんですか」  俺の言葉にそう言って揶揄うのは、天童と同じく、一緒に講義を受ける海老沢。すでに飯を食い終わって携帯を弄りながら、ニヤニヤしている。  こっちは俺と同じような茶髪に短髪で、片耳にピアスをしたチャラ男風。俺や天童と違って、背がデカいのがムカつく。毎回、くだらないことで揶揄ってくるのもムカつく。だからといって、こいつに合わせるつもりはない。 「ハイ、ソーデスネー。親離れできないマーくんでーす」  棒読みで返事をしながら、俺はみわ子のことを考えていた。  こんな時間にメールを送ってくること自体、珍しい。  この時間、みわ子はパートで百貨店の食品売り場、それもお惣菜コーナーで売り子をしているはずなのだ。一番の混雑の時期に、よくメールを送ってこれたものだ。それくらい、何か、逼迫したことでもあったのだろうか。
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