母親は山ほどのケーキに困惑する

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 揚げ物の美味しそうな匂いがフロアを漂っている。  お惣菜売り場には、和洋中と、さまざまな料理が並べられ、夕飯前ということもあって、それを求めて買う人々が溢れている。当然、バイト前の俺の食欲もそそられる。  みわ子は、揚げ物を何種類も取り扱ってる惣菜屋で、週五日、パートで働いている。 「あ、政人!」  みわ子が黒いエプロンに、黒い三角巾を頭にして満面の笑みで、手を振ってる。自分の親ながら、元気がよすぎて恥ずかしい。  小柄な身体に童顔のおかげで、いつも若く見られるらしい。それだから、男にも侮られることが多いみたいだ。強引な相手の言葉を、断れないことも、原因の一つだとは思う。
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