母親は山ほどのケーキに困惑する

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 正直、母子家庭のうちに、俺の学費なんか用意など出来なかった。そんな俺たちに手を差し伸べてくれたのが、武原さんだった。差し伸べた、というか、強引に、貸し付けてきたというか。  今も少しずつ返済している借金。その苦しみを知ってるだけに、これ以上、人から借りたくなかったけど、武原さんの「学力があるんだったら、大学くらいは出してやれ」という言葉と、威圧感たっつぷりの一睨みで、みわ子がありがたく借りることになったのだ。  でも、その返済は俺が働いて返すってことになってる。だから今のバイトも頑張ってるんだけど。これでも、ちびちびと返しているのだ。 「どうしたの」  俺は揚げ物がいくつも並べられたガラスケースの前に立つ。俺以外にも揚げ物を買いに来てるおばちゃんが立ってたけど、まだ迷ってる様子。
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