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そこにいたのはガタイの良さそうな黒いスーツの胸の辺りしか見えない。
もしかして、借金取りの親玉が出てきたのか、と、みわ子のところに逃げ帰って、二人で怯えていたら、ガチャリと勝手にドアが開いた音がした。
なんで開いたんだ?というので混乱してると、玄関先でごそごそと靴を脱ぐ音がした。土足で入ってくるかと思ってたから、困惑しながら玄関のある方を見つめていると、やっぱり背の高くて真っ黒なスーツに鋭い眼差しの男が現れた。艶々とした黒い髪を固めた姿は、まさに『ヤ』のつく職業の人、そのもの。その男がポツリと低い声で「みわ子、無事か」と不安そうに声をかけてきた。
その時、その人が、みわ子の兄の幼馴染の武原さんで、まさに、『ヤ』のつく職業……組長さんだってことを初めて知った。
そして、親父との離婚の間に入ってくれてたのが、この人だったらしい。
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