最初の注文は牛丼の大盛でした

7/14
前へ
/310ページ
次へ
 そこにいたのはガタイの良さそうな黒いスーツの胸の辺りしか見えない。  もしかして、借金取りの親玉が出てきたのか、と、みわ子のところに逃げ帰って、二人で怯えていたら、ガチャリと勝手にドアが開いた音がした。  なんで開いたんだ?というので混乱してると、玄関先でごそごそと靴を脱ぐ音がした。土足で入ってくるかと思ってたから、困惑しながら玄関のある方を見つめていると、やっぱり背の高くて真っ黒なスーツに鋭い眼差しの男が現れた。艶々とした黒い髪を固めた姿は、まさに『ヤ』のつく職業の人、そのもの。その男がポツリと低い声で「みわ子、無事か」と不安そうに声をかけてきた。  その時、その人が、みわ子の兄の幼馴染の武原さんで、まさに、『ヤ』のつく職業……組長さんだってことを初めて知った。  そして、親父との離婚の間に入ってくれてたのが、この人だったらしい。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5262人が本棚に入れています
本棚に追加