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「これ、クッキー。私、焼いたの♪」
「Wow! 手作り!」
「お料理やお菓子作りが得意な子が作ったのと違って、美味しくないかも知れんけど……」
「そない俺食べる前から、謙遜すなや~」
「ごめん」
「じゃあ~、いっただっきま~す!」
「……って、ちょっとちょっと! 誰もあんたにあげるぅ~、言うてへんやん!」
「ん、えっっっ?!」
「いやいや、せやから~、『クッキー焼いたぁ~』言うただけで、誰も『あんたにあげるぅ~』言うてへんし、『食べてぇ~』て、言うてへんやん!」
「いやいや、この展開って、だいたい、世間では、俺に恋してくれてて、その恋してくれてる女の子が、家でクッキー焼いて来てくれたぁ~、……みたいに思うやん!」
「『思うやん!』って、『おてもやん!』みたいに言うてるけど、誰もあんたに恋してないから!」
「恋してないのん?」
「恋はしてるけど、あんたには恋してない!」
「何~じゃ、それッ!」
「あんた洋菓子屋さんの息子やんか! 何のための幼馴染みやねん!」
「お前、ひどいやっちゃの~」
「彼氏おんのん知っとるやんか!」
「せやから、彼氏と別れて、俺への愛に気づいたんかなて思たがな」
「ラブラブじゃ、アホ! 初めての手作りクッキー、彼氏にあげよ思てんねん。イケてるか味見して!」
「ほんま、ひどいやっちゃで、こいつ~。んで、どれ食べたらええねん?」
「そのちっこいのん、かじって!」
「せめて、おっきいのん食わせや!」
「アホッ! こんなけしかないのん、見た分かるやろ! で、どない?」
「ん、まぁ~……、美味しいんちゃう」
「ほんまに?!」
「まぁ~、そら、プロが作ったような、究極の美味しさっちゅうわけではないけども、マズいわけでもないし、普通に美味しいんちゃうか」
「標準的な感じ?」
「せやな~、この味、嫌いな人おれへんのんちゃう? ストライクゾーン広い、飽きなさそうな味で、ええと思うで」
「飽きない商い、させてもろてま!」
「おぬしも悪よの~、ハッハッハ!」
「お代官様程ではございません! ハッハッハ!」
「♪恋する標~準クッキー、意外と、そ~んな悪くないよ~♪」
「♪エヘッヘ~、エヘッヘ~♪」
「よし、『恋する標準クッキー♪』、それで行けや!」
「行ってきます!」
「さすが、幼馴染みやろ! ええ感じで褒めるやろ?」
「バ~カッ!」
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