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 随分打算的だな、と時々は自分を軽蔑する。圧倒的な魅力はないまでも自分が正直、「それなりに好かれている」「隠れた人気がある」程度ではあることを自覚している身としては、慕ってくれている皆に申し訳ないような気になる。 「最上くんもいいけどぉ~、私は二ツ木くんも地味に好きだな!」「わかる!最上くんほどの華やかさはないけど二ツ木くんって、よく見るとまあまあ可愛い顔してるよね」  そう言ってくれる女子たち、ごめんな。俺は本当は、あいつとツートップのように並べてもらうほどの器じゃないんだ。みんなが思うよりも俺は、心の汚い人間なんだよ……。  あ、あいつというのは、最上もがみ一はじめというのは、隣の2年1組にいる、学年の有名人である。こうして周囲からは最上か、二ツ木か、という扱いを受けているが、2組の俺は彼とろくに話したことはなく、本人同士にこれといった交流はないのである。  それに周りの評価はどうあれ、俺は最上と自分との明確な差にちゃんと気づいていた。どんな場面においてもサブ、二番手ばかりを極めてきた俺とは対照的に、最上は正真正銘人の上に、ヒエラルキーの頂点に立ってきた男だ。小中学校時代はキャプテンやら委員長やら生徒会長やらを次々と務め、高校生になった今も成績はいつもトップ、容姿だって文句なしに学年一のイケメンである。     
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