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 でも俺も、どこかで薄々気がついていた。この謎の症状は、出始めの頃より、ゆるゆると強度、頻度とも増してきていることに。そしてもう既に割と、今はこれであまり困っていないが、これ以上悪化されてはまずいところまで来ているということに。俺右利きだし。  ペンを持って字を書くことは仕方ないとして、紙に触る度に指先が痛んでいてはとても勉強にならないので、参考書やノートのページはなるべく右手ではめくらないことに決めた。  こうして少しずつ、触れられないものが増えていくんだ。  症状が出始めてから初めて、段々と自分が蝕まれていくことに思いが至り、俺の中にもさすがに小さな焦りが生まれた。  二ツ木ふたつぎ次ちか。  そんな名前の通りに俺は生きてきたように思う。  子どもの頃から委員長ではなく副委員長、キャプテンではなく副キャプテンを務め、成績も学年トップはさすがに取れないが二位にならなれる、学年一のイケメンではないがみんなの二推しくらいの位置。俺が持っているのってそういう中途半端なカリスマ性。  トップにはなれないから。そうなのかもしれないが、それ以上に、俺はナンバーツーになることを「選んで」きたような気がする。ナンバーツーというのは実はトップ以上においしい、というのが、17年の二番手人生を通して俺が導き出した結論である。大袈裟な肩書ほどの苦労もなければ、正リーダーほどの重責もないが、それでいてそれなりの人望も得られる。     
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