2人が本棚に入れています
本棚に追加
彼はシートを拾い始める。全部で20枚ほどを拾い上げると、ケースに入れた。
その直後、ふと気づく。
(あ、どうせ書くんだからこれに書けばいいか)
自分がケースに入れたシートのうち1枚を取り出し、ランダムピックにマークをしてから窓口に持っていく。
すると、受付の女性が涙声で彼に礼を言ってきた。
「お手数かけてすいません、ありがとうございます…」
「あ、いえ」
「すぐ拾いに行こうと思ったんですけど、私…!」
女性はそう言いながら、ハンカチで目元を押さえた。それを見た直哉は、あわててシートを差し出す。
「あ、あの…お願いします」
「あっ、ごめんなさい私ったら。ぐすっ…」
女性はシートを受け取り、それを機械に差し込む。発行されたくじ券を直哉に返す時、彼女は赤い目ながら笑顔を見せた。
「本当にありがとうございます! どうか当たりますように…」
「ど、どうも…」
直哉は戸惑いつつも笑顔を返し、支払いをすませた。
その日の夜。
彼はネットで結果を確認した。
(…まあ、そうだろうな)
発表された番号に、直哉が持っているくじ券はかすりもしなかった。
だが今回、彼の顔に落胆の色はない。
(ちょっとは、気持ち…ラクになったっぽくて、よかった)
最初のコメントを投稿しよう!