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よこしまな筆跡
多井 直哉(たい なおや)は週2回、数字選択式の宝くじを買う。
「お願いします」
「はぁーい」
しかし数字選択式にも関わらず、彼は数字を選ばない。
ランダムピックという方式で、機械に数字を選んでもらっている。普通に買ってもランダムピックでも、くじの値段や当選確率、そして当選金額にちがいはない。
「いつもありがとうございます、300円です」
「はい」
直哉がランダムピックを使うのは、いちいち数字を選ぶのが面倒という以外にもこんな理由があった。
(一生懸命選んで全部ハズレだったら、ちょっと立ち直れないもんな…)
当選が発表される当日昼にくじを買い、仕事が終わって夜に帰宅してから自分が当たっているかどうかを確認する。これを週に2回やり始めて、もう10年ほどになっていた。
肝心の当選確率はというと、十人並みでありとても低い。当たるとしてもほとんどが5等1000円で、数年に一度4等1万円が当たればいい方だった。
週に2回、つまり年に約104回。1口300円のくじを直哉は1口しか買わないので、大体3万1200円の出費になる。
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