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男は言ふ
「誰ぞ心の重い痛みを無くせる者はおらぬか?」
漆黒の夜空に向け、そう嘆げ掛けるが
その解いに答える術も無く。
星が小さく瞬いたと思えばスっと項を描く様に流れ落ちて行く。
長い紅い煙管から煙草を吸えば慣れた具合に口たらゆっくりと白い煙を吐き零した…。
何処からか琴の音が凛として奏でるのを
耳を澄ませば
そっと目を伏せ、心を掴まれた痛みと同じ様な感覚に陥る。
(この痛みは何ぞ……)
まだ彼は知らない
その痛みは辛くも有り幸せな恋心だと……
それを知るのは、まだ先のお噺。
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