血飛沫の開幕 未完成な愛液

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血飛沫の開幕 未完成な愛液

 あふれんばかりに桶にためられた熱湯の水面に映されたのは、人斬りの姉と人斬りの姉に執着し憧れている弟の姿。  ふたりは互いの背中を触れそうなほど密着させ、それぞれの仕草で夜風にみるみる温度が低下していくお湯を頭から何度もかぶっていた。  ふたりとも?をわずかに赤らめさせていた。  それは熱湯のせいなのか、それとも血の繋がりがありながらでもたがいに異性という関係に意識をしているのかは定かではないが、どちらにしろこのまま何も起こらないわけない。  人を斬った日はなんどもお湯をかぶっても被り続けても、姉と弟は目に見えない汚れが染みついているかのように思え、桶から出れないでいるのが常だった。  熱湯もしまいには生ぬるくなり、せっかく温まった身体が容赦なく吹きかける夜風のせいで体温が低下してゆく。夜風が最後に行き着くのは草葉をまじえた夜空へと吹き去る。 「ねえ、こっちむいてよ、姉さん」  股間の部分を硬く膠着させた弟の小町大輔がひ弱な口調で背中越しに姉の沙織に震える声で言った。 「どうして?」     
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