血飛沫の開幕 赤黒い蛆虫

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 呆然と己の二本の忌まわしい過去が刻まれ、赤黒い蛆虫が湧き蠢く瞳をもつ顔を見上げる弟の大輔に、姉の沙織が言葉を向けた。 「本当に人斬りになりたいなら、あなたも私と同じ瞳をもつことになり、一生ぬぐいきれない吐気がするほどの血生臭い香りを懐き生きていかないといけないのよ?」 「だ、だから、なんだって言うんだよ」  正直、姉の小町沙織の赤黒い蛆虫の蠢く瞳を観るたび、背筋に冷たい汗が流れ、怖気付き後ずさりをしてしまうのだが、今日だけは弟の大輔は後ずさりをすることはなく、真正面から父親殺しの姉である小町沙織に歯向かうような態度で対峙した。  そんな態度の弟の大輔に瞬時に人格が変わったかのように口角を嫌らしくあげては、ぐじょぐじょの土の帰路の地面に落としていた和傘を、握り拾いあげては、大輔の頭を躊躇いなく殴ってみせた。  避けることができなかった大輔は浄化の雨で濡れた土の地面に顔面からぐじゃっと叩きつけられてしまった。 「くそ、なにするんだ!」  どろどろに汚れた顔をあげ、大輔は突然、意味のわからない行動をおっぱじめた姉に激しく問いかけた。  小町沙織はそこにいなかった。  小町沙織の姿をした鬼がいた。 「あなたが人斬りになるって言うから、こんな痛い目にあうのよ」  そんな身勝手な言い分を聞かされた大輔は表情筋を刺激させ、声を荒げた。     
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