血飛沫の開幕 赤黒い蛆虫

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 聞き終えると小町沙織は顔面を浄化の雨で濡れた泥で汚した弟の大輔の手を優しく添えて掴み、ぐいっと彼を立たせた。  小町大輔の身体は泥だらけだった。  そうさせたのは小町沙織の姿をした鬼だった。  が、その時には赤黒い蛆虫が蠢く鬼の瞳は小町沙織の精神の奥部屋に潜んでいた。 「ごめんよ、どうかしていたみたいだね」  姉の小町沙織は泥だらけの顔となった弟の大輔の顔を、懐からぼろ切れの手拭いを取りだし、優しい手つきで拭いとってあげようとしたが、照れた様子で弟は拒み、照れ隠しに家へ繋がる帰路をとっとと歩きだした。  そんな弟の背中を見つめた姉の小町沙織は腰に掲げた日本刀を愛おしく、愛おしく、撫でていた。
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